スポットライトが照らす舞台の中央には1本のマイク。壁にはお笑い芸人のサインがびっしり。ここは、大阪・ミナミのお笑い芸人とお笑い好きが集まるバー「舞台袖」。大阪で生まれ育った加藤進之介さん(28)が脱サラして昨年6月に開いた。
「お笑い芸人を応援」がコンセプトで芸人の飲み食いはタダ。人件費などの固定費を削り、客の飲食代とライブチケット代で、給料が安い芸人たちを支える仕組みだ。
人気店となったが、オープンから1年足らずでコロナ禍に見舞われた。それでも、「おもろい企画はないか」と考え続けた。6月にはカウンター反対側のステージと客席の距離を保ち、来場者にフェースシールドにマスク、手袋、カッパの着用を求め、「客の私たちが感染予防しまくるから、芸人さんは好きにやってくれライブ」を開いた。お笑いに飢えた客と、笑い声に飢えた芸人が集まった。
加藤さん自身もかつては芸人を夢見ていた。自信を持てなかった中学時代、友人から「自分、ツッコミおもろいな~!」と褒められた。「ほっそいほっそい柱でしたけど、その言葉にしがみついてきました」
高校の卒業式、友達と教室で漫才をやってウケた。快感を知った。大阪大に進学後は、そこで出会った友人とコンビをつくり、「思い出づくりに」と何度かオーディションも受けた。
大学3年の冬、吉本興業の芸人養成所「NSC」に通わせて欲しいと両親に土下座して頼んだ。休学中の学費やNSCの入学費用40万円はアルバイトでためたが、母親は猛反対。「じゃあ今、おもろいことやってみ。ほら何もないやん」。返す言葉もなかった。
運命の卒業ライブは、若手漫才コンビ「たくろう」の赤木裕さんとのコンビで臨みました。
親の理解を得られぬままNSC…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル